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会長挨拶

 第43回日本青年期精神療法学会総会は、2026年12月13日から14日の2日間、横浜市開港記念会館で開催されます。大会長としてご挨拶申し上げます。

 青年期に入ると、子どもを取り巻く環境は大きく変わります。児童期までの規律ある生活や緩やかな仲間関係から、より高度な学習と親密な仲間関係、部活動など限られた仲間との集団活動へと、一層複雑な課題に向き合うことになります。活動範囲は広がり、身近な大人との心理的距離も次第に大きくなります。こうした目まぐるしい変化のなかで、次々と新たな状況に適応していくことは、青年にとって容易なことではありません。青年期に様々なつまずきが生じるのは、至極当然のことです。

 つまずきのきっかけは、これまで経験したことのないことばかりです。誰かに知恵や助けを借りなければ、前へ進めないこともあります。そんなとき、心理的に距離を置くようになっていた身近な大人にもう一度近づき、自分の気持ちを打ち明けることができれば、支援につながるかもしれません。ただ、そのような青年ばかりではありません。打ち明けることをあきらめたり、我慢したり、そもそも打ち明けることなど思いも寄らなかったり。自身の思いを言葉にできない青年が、精神症状や身体症状、行動上の問題を抱え、保護者とともに診察室を訪れます。

 このような青年を、どうすれば理解できるのでしょうか。わからないのは治療者だけではありません。保護者も、そして本人でさえも、自分がなぜこのような状況にあるのかわからないことがあります。つまずきのきっかけは、本当に青年期に直面した課題によるものだけなのだろうか。現在の状況だけからではわからなければ、これまでの本人の歴史を辿り、生まれてから現在に至るまでの歩みに思いを巡らせてみてはどうだろうか。青年期の精神療法では、治療者は本人と保護者とともに苦悩し、試行錯誤しながら治療を進めていくことになります。

 青年期の精神療法の技法を習得することは至難です。時は変われど、治療者自身に引っかかりのある症例を症例検討会に提示し、ああでもないこうでもないと議論する。近道は見つからず、そういった経験を地道に重ねることが、技法の習得を助けてくれます。そこには「ああでもないこうでもない」と意見をつぶやく、一家言持つ臨床家の存在が欠かせません。本学会は、診療で苦悩を重ねてきた臨床家が集い、このような症例検討を経験できる数少ない学会です。

 このたびの総会のテーマは、「症例から知る青年期精神療法の要諦」としました。一人ひとり異なる症例を深く議論すると、そこに他の症例にも通底する普遍性を感じることがあります。症例検討は、その場に参加するすべての方に、日々の治療を考える新たな手がかりを与えてくれます。この総会が、それぞれの治療者が精神療法で大切にしていることを持ち寄り、症例検討やシンポジウムを通じて議論する機会となれば、この上ない喜びであります。

 会場となる横浜市開港記念会館は、横浜港にあります。1858年の日米修好通商条約、その後諸外国との同様の条約締結を経て、神奈川の開港が定められました。米国側が考えていた神奈川は、東海道の宿場であり、現在の神奈川区東神奈川周辺にあった神奈川宿でした。しかし、尊皇攘夷思想が世を席巻するなかで、幕府は外国人と日本人との衝突を避けるため、対岸の横浜村の開港を主張し、1859年に横浜村が開港場となりました。当時の横浜村は海に囲まれた自然の砂州で、長崎県の出島を彷彿とさせる地形だったそうです。幕府には出島での手法が念頭にあったのかもしれません。静かな漁村だった横浜村の開港から、今日の横浜の発展が始まりました。このような近代史の妙を感じながら、ぜひ横浜を楽しんでください。

 本総会が、皆様の臨床の一助となる機会になれば幸いです。横浜港にて、皆様のご参加を心よりお待ちしております。

第43回 日本青年期精神療法学会総会

会長 三上 克央

​(東海大学医学部医学科総合診療学系精神科学 教授)

Copyright © The 43nd  Annual Meeting of  the of Japanese Association for Adolescent Psychotherapy

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